認知症について

認知症の兆候を理解する

人は歳を重ねるにつれて、忘れっぽくなったり、混乱しやすくなったり、以前は簡単にできたことができなくなったりすることがあります。あなたの近しい人にそうした変化があるなら、それは高齢の方に多く見られる、認知症の兆候かもしれません。大事なのは、それを念頭に置きつつ、その方の状態をできるだけ詳しく探るよう心がけることです。ご本人が毎日向き合っている状況を深く理解することが、最良の介護へとつながります。  

認知症とは何でしょうか?

脳は、私たちのほとんどあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。それがうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態を指します。脳のどの部分が影響されているかによって、症状が異なります。通常、記憶と日常のタスクを計画し実行する能力が損なわれ、 
言語、時間の概念、方向感覚など、いわゆる認知能力にも影響を及ぼします。また症状の一環として、不安、鬱、行動の変化も生じることがあります。認知症のある方はこれらの症状のために、周囲のサポートが必要になってきます。
 
「認知症」は病名ではなく、記憶の喪失、情緒の変化、意思疎通および論理的思考における問題といった症状を総称するものです。認知症にはさまざまな種類があります。最も一般的なのは、アルツハイマー型認知症と脳血管型認知症です。

認知症のさまざまな種類

認知症は多くの場合進行性で、症状がゆっくりと現れて徐々に悪化します。あなた自身または大切な方が記憶や思考能力に問題や変化を感じたら、決して軽く考えず、早めに医師に相談して原因を確かめましょう。医師による検査の結果、治療することのできる症状が見つかることもあります。症状から認知症が疑われる場合でも、早期の診断を受けることによって、治療の効果をより高めることができるほか、被験者として臨床試験や研究に参加するチャンスがあります。早めに診断を受けることで、将来のために計画を立てる時間も確保できます。

症状

認知症は単一の疾患のみを指す言葉ではありません。さまざまな疾患および損傷によって発症する、広範囲にわたる症状を総称する言葉です。ここでは、最も一般的な認知症の5つの種類に絞って説明していますが、その他の種類にも簡単に触れています。 
アルツハイマー型認知症 - 意思伝達が次第に難しくなっていく疾患です。早期診断を受けることが重要です。
 
血管性認知症 - 重度または軽度の脳卒中が原因となって発症し、急速に、または徐々に進行します。 
 
前頭側頭型認知症 - 一次性変性性認知症のひとつです。
 
ハンチントン病 - 非常にまれな疾患で、10万人に5人が罹患していると言われています。 
 
レビー小体型認知症 - 認知症全体の2~20%を占めています。
 
混合型認知症 - 2種類以上の認知症の症状を同時に発症する場合の呼称です。 
 
二次性認知症 - 脳腫瘍やアルコール中毒、さまざまな機能不全など、80種類近くの疾患および損傷が含まれます。
 
パーキンソン病 - ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質の不全によって発症する疾患で、認知症全体の1.2~3%を占めます。

認知症とともに生きる

認知症と診断されると、ご本人やご家族はショックを受け、その後さまざまな感情の波を経験すると思われます。しかし、それで人生が終わったなどと決して思わないことが大切です。人生にはチャンスとチャレンジがつきものです。それは、困難な状況にあっても変わりません。