“排泄ケアを変えたい”病院を動かした患者サービス委員会の取り組み

掛川市立総合病院(現・中東遠総合医療センター)
(月刊ナーシング2013年3月号掲載)
 
質の高いケアを提供したい──.しかし,その思いをかたちにするためには,多くの職員の協力が必要なこともある.掛川市立総合病院患者サービス委員会では,排泄ケアを向上させるためにどのような働きかけをしたのか,話をうかがった.

 

アプローチ方法を変えてTENA導入が決定


 ─TENA導入の経緯をお教えください.

青木 固定チームナーシング研究会全国集会に出席した当院の副院長から,「排泄ケアの向上に役立つから検討してみてはどうか」と勧めていただいたのがきっかけでした.排泄ケアを看護部の患者サービス委員会の検討課題として取り上げ,副看護部長を中心に勉強会の開催や他施設の見学などの活動を始めました.

八木 2009 年度の患者サービス委員会では療養環境をテーマに活動しており,持ち込みオムツへの対応も課題の1 つでした.TENA導入による排泄ケアの向上に加え,ベッドサイドが整理されることによる看護師の作業スペース拡大という相乗効果も得られると考えました.

─TENA導入はスムーズに進みましたか?

青木 オムツが病院からの提供に変わるため,関係部署との調整が必要でした.家族にオムツを用意してもらう手間が省ける,1 枚単位で購入でき,リハビリパンツへの移行時期に対応できるなど,病院提供に変えることへの利点を説明しましたが,最初は医事課の許可が降りず,TENA採用は見送られました.

当院は公立病院のため,オムツを限定できないこと,自費払いになることで別会計が必要なこと,などが大きな理由でした.排泄ケアの向上を目的とした取り組みが認められなかったことはショックでしたが,患者サービス委員会で検討を重ね,別の角度からアプローチすることになりました.

八木 当時,病院が全職員を対象に経費削減のための企画案を募集していたので,TENA導入による経費削減策として提案しました.結果的に採用されませんでしたが,看護部の“排泄ケアの質を高めたい”という思いが伝わり,経営企画課の提案で再度医事課と話し合うことができました.

青木 公立病院はどうしても従来のやり方を変えるのが難しいところがあります.しかし,医事課との話し合いでは,看護部の“思い”を理解してもらうことができました.やりたいことをきちんと伝えるのは大変なことですが,個人の意見としてではなく,患者サービス委員会の活動としてやってきたからこそ受け入れられたのではないかと思います.

─当初の課題はどのようにクリアされたのでしょうか?

伊藤 オムツは選択できるようにし,入院時に私たちが目指している排泄ケアについてお話ししたうえで同意が得られた患者さんにTENAを使用しています.また,会計は明細書に別枠を設けることで医事課の協力が得られました.

八木 TENAの導入が決まると,「会計時に質問を受けるのは医事課職員だから,TENAのことを知っておきたい」と,医事課職員と医療事務職員もTENAの研修会に参加してくれました.

 

委員会活動を通じて排泄ケアへの意識統一


─委員会ではどのような活動をしたのでしょうか?

伊藤 患者サービス委員会は,各部署から1 人ずつ計8 人のメンバーで活動しています.2010 年度は,オムツ使用者の現状調査を行い,TENA導入による経費削減と収益の試算を出すとともに,スタッフアンケートの実施や運用方法などを検討しました.それと並行して,排泄の自立の視点やオムツ交換が患者さんの睡眠を妨げていないかなど,現状の排泄ケアを見直し考える機会を設け,委員会で意識の統一をはかりました.

私自身,以前は,オムツを何枚も重ねている患者さんをみて,「もれないように上手にあてているな」と,ある意味感心していたところがありました.しかし,TENAの勉強会に参加したり,委員会で話し合いを続けるなかで,患者さんの視点に立った排泄ケアについて考えるようになりました.排泄ケアの質を高めたいという意欲にかられ,突き進んでいったという感じです.

─現場でのTENA導入はスムーズに進みましたか?

伊藤 最初は,TENAの特徴を活かして排泄の自立と安眠を目的とし,脳外科と整形外科の2 病棟で導入しました.トイレ誘導時もオムツの着脱が楽なので,TENAの使い勝手のよさを実感しました.しかし,最初はあて方が悪く横もれしてしまうこともあったので,報告を受けたときには,繰り返し指導しました.

八木 TENAアドバイザー*が現場で指導してくれたのも大きいと思います.従来の持ち込みオムツを使用している患者さんもいるので,TENAとのあて方の違いがわからなくなってしまうことがありますが,あて方を復習することができますし,患者さんの状態に応じてアドバイスがもらえるので,頼りにしています.

委員会で話し合うなかで,産科に入院している褥婦へT字帯の代わりにTENAを使ったり,術後の泌尿器科病棟の患者さんに軽失禁パッドを使ってみたいといった要望も出てきました.導入の際は最低限のアイテムでスタートしましたが,物流システムの担当者もそのつど対応してくれたので,必要に応じていろいろなアイテムを入れています.

 

地域連携や新病院での排泄ケア向上が課題


─今後の課題を教えてください.

八木 退院後もTENAを使いたいという患者さんには,家族にあて方を指導していますが,自宅に戻るとわからなくなってしまう方もいます.担当のケアマネジャーからの声を受けて,地域連携室で地域のケアマネジャーを対象にTENAの勉強会を企画しましたが,退院後も患者さんや家族が困らないように,ケアが継続できるような取り組みをしていかなければならないと思います.

青木 当院は,2013 年5 月に袋井市民病院と統合し,中東遠総合医療センターとなります.新たな仲間が増えるので,排泄ケアへの取り組みをどう伝えていくのかも今後の課題です.

患者サービス委員会を立ち上げたときの目的は,新病院開設前に自分たちの看護を見直すことであり,その1 つとして排泄ケアに取り組みました.看護師はみんなほんとうにがんばってくれていますし,これからも期待しています.

*TENAアドバイザー:施設・病院のコンチネンスケアの課題やコスト効率を分析してサポートする専門アドバイザー

 

掛川市立総合病院の排泄ケアの取り組み

経営戦略の1つとして排泄ケアを見直す

〈1 年間でオムツ交換にかかる費用(円)〉
※ 同院の実績調査より,入院患者のうち40 人が失禁によるオムツ使用のため,40 人で試算

オムツ交換回数の減少により,オムツ交換にかかる費用(オムツ代は除く)のうち約200 万円削減が見込める試算となった.さらに,オムツ使用による収益が得られることを示し,TENA導入につなげた

 

 

 

 

排泄ケア通信の発行

患者サービス委員会が月1 回発行している「排泄ケア通信」.毎号,各病棟からの実践報告や取り組みを紹介している

 

現場の声

整形外科病棟 田辺真奈美看護師

整形外科の入院患者さんは,トイレでオムツの前後をはずす際,術後の痛みが残るなかで立ち上がってもらうのが大変でした.TENAフレックスは前をはずすだけなので看護師1 人でも介助がしやすくなりました.また,当院は高齢でもオムツをあてたことがない患者さんが多いので, オムツに抵抗を示す方もいますが,TENAは楽にトイレに行けるので,患者さんの心理的な負担も軽減できると思います.

もう1 つ大きなメリットは早期離床です.術後翌日からトイレに行くことで離床を促すこともできますし,TENAパンツ(紙パンツ)は,ウエスト部分のゴムが非常にやわらかいので,力のない患者さんでも自分でパンツの上げ下げができ,排泄の自立につながっています.オムツが病院提供になったことで,患者さんの状況に応じてすぐにTENAパンツ(紙パンツ)に変更することもでき,無駄なく使えるとスタッフのあいだでも好評です.


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