課題を乗り越えオムツの統一化をはかり一人ひとりが”考える”排泄ケアを実践

安曇野赤十字病院様
(月刊ナーシング2013年5月号掲載)
 
排泄ケアの質を向上させるためにTENAを導入した安曇野赤十字病院.しかし,当初は持ち込みオムツとの混在でケアの評価ができず,病棟間のアセスメント能力にも差が出てしまったという.この課題をどのように解決したのか,話をうかがった. 

 

新病院移行のタイミングで排泄ケアを見直す


─TENAを導入したきっかけを教えてください.

小西 看護は患者さんに合わせた個別性の高さが重要ですが,排泄ケアはいつからか同じ時間に一斉にオムツ交換をする画一的なケアになっていました.2010 年7 月の新病院への移行を控え,改めて排泄ケアの見直しが必要だと考えました.

オムツの選択にあたり,皮膚・排泄ケア認定看護師の依田さんとディスカッションを重ねました.そのなかで当院がめざす個別性の高い排泄ケアというコンセプトと一致したのがTENAでした.

依田 私自身,認定看護師の教育課程で学ぶなかで,当院の排泄ケアについて考えさせられました.排泄ケアが看護ではなく業務になっていたり,漏らさないためにオムツを重ねづけするという,患者さんの尊厳への配慮が欠けていたところもありました.新病院への移行は,排泄ケアに対する看護師の意識を変えるよいタイミングだったと思います.

─TENAへの移行はどのように進めましたか?

小西 病院の方針で売店でのオムツ販売を継続して行うことになり,売店販売によりTENAが導入されました.しかし,売店での取り扱い実績はなかったため売上への影響が懸念され,最初は売店でほかのオムツとTENAを販売することで折り合い,持ち込みオムツの使用も可能にしました. 

依田 しかし,オムツが混在している状態で1 年弱が経過し,問題点が浮き彫りになりました.TENAを推奨しながらも,患者さんや家族に対し,私たちの排泄ケアへの取り組みへの理解を求めるアプローチができていませんでした.また,オムツの混在により,目的に合ったオムツの選択ができず,排泄ケアの評価も困難な状況でした.TENAの使用率が高い病棟と低い病棟の看護師のアセスメント能力にも差が生じるなど,いくつかの課題があげられました.

こうした課題解決のためには,オムツをTENAに統一し,さらにスタッフの意識を変える必要があると感じました.

 

新たな課題解決のためにはTENAへの完全移行が必要


─TENAへの完全移行はどのように進めましたか?

依田 看護部長との話し合いのなかで,個別性の高い排泄ケアの実施はもちろん,TENAへの移行による交換回数の減少,それに伴う患者さんの安眠の確保など,TENAへの完全移行によるメリットとそのための課題を抽出しました.

小西 完全移行への大きな課題は運用方法でした.SPDの導入による一括購入は病院の収入にはつながりますが,売店の売上は落ちます.そこで,施設課や医事課,売店の担当者,TENAアドバイザー*を交え話し合いの機会をもち,看護部の意向,目的を伝え,売店・病院・看護部にとってwin-winの運用,流通方法を模索していきました.

その結果,売店のスタッフが午前と午後に各病棟のオムツを補充して,看護師が使ったオムツの枚数を複写式の伝票にチェックして売店と家族に渡し,売店で精算できるシステムに変更しました.また, 在宅療養に移行しても継続してTENAを使用したいという要望も多いため,売店でもオムツはTENAのみを扱うことにしました.

依田 排泄ケアへの意識を高めるための取り組みでは,勉強会や研修会を繰り返し行いました.看護師や介護福祉士,看護助手に加え,事務やリハビリテーション科のスタッフにもよびかけ,オムツをあてる体験もしてもらいました.とくにリハビリテーション科のスタッフは協力的で,100%参加でした.研修会に参加できなかった看護師には,排泄ケアの中心的役割を担う褥瘡対策委員会のリンクナースが直接指導することで周知徹底をはかりました.

 

褥瘡対策委員会を中心に病棟内で意見を出し合う


─TENAへの完全移行により排泄ケアへの変化はありましたか?

依田 TENAに完全移行したことで,なかにはオムツ交換回数が1日2回に減少した患者さんもいます.1回のオムツ交換に30~40分かかっていたのが,ラウンドでポジショニングや排泄の有無の確認をするだけですむようになり,確保できた時間を別の業務に当てることができるようになりました.

胡桃 入院患者さんは点滴や利尿剤の使用など,疾患やその時々の症状に合わせた対応が必要になります.現在,リンクナースを通じてアセスメントされた排泄ケアの情報や事例が病棟間で共有されるなど,コミュニケーションが活発になりました.また,外来でも正しく情報を患者さんや家族に伝えることができています.

依田 以前はオムツ使用による皮膚障害やびらんへの対応といった相談が寄せられていたのに対し,TENAへの完全移行後は,皮膚障害に対するコンサルテーションがほとんどなくなりました.

また,各病棟の看護係長や褥瘡対策委員会のリンクナースが中心となって排泄ケアのカンファレンスを実施するようになり,患者さん個々の状態に合わせたケア方法や製品の選択などについて話し合う機会をもつようになった結果,尿や便が漏れるケースでは,現象だけに目を向けるのではなく原因を追求するようになりました.「この患者さんにこのオムツを選択しましたが問題ありませんか?」というように,自らアセスメントの上で製品選択をし,意見を求められることもあります.
このように,スタッフ一人ひとりがケアについて深く考えることができるようになったのは大きな成果だと思います.

小西 TENA導入当初は使用オムツの統一がされず目的が遂げられませんでしたが,当初の目的を見失うことなく,再度,看護部だけではなく,病院全体の問題としてさまざまな部署の協力のもと,知恵を出し合うことで,今回排泄ケアの見直しを進めることができました.また,統一により,看護師一人ひとりが排泄ケアの個別性への意識が高まり,取り組むことができるようになったことは,当初の目的でもあり,うれしく思います.

*TENAアドバイザー:施設・病院のコンチネンスケアの課題やコスト効率を分析してサポートする専門アドバイザー
SPD:supply processing and distribution,院内物流管理システム

 

安曇野赤十字病院の排泄ケアの取り組み

オムツ使用パターン表と個別ケアカードの作成

治療内容による尿量の増加や体型,片麻痺がある患者など,患者の排泄パターンや身体状況に応じてオムツを選択.個別ケアカードに該当するTENAのシールを貼って交換パターンとサイズを明確にし,排泄状況に応じてアセスメントを繰り返し,患者に応じたオムツを選択する治療内容による尿量の増加や体型,片麻痺がある患者など,患者の排泄パターンや身体状況に応じてオムツを選択.個別ケアカードに該当するTENAのシールを貼って交換パターンとサイズを明確にし,排泄状況に応じてアセスメントを繰り返し,患者に応じたオムツを選択する

 

TENA使用によるオムツ交換回数の減少

TENA採用前は1日6~7回オムツ交換を行っていたが,TENA導入後は1日3回に減少.1回のオムツ交換に30~40分かかっていたが,ラウンドによる排泄の有無とポジショニングの確認だけですむようになった時間帯ができ,ほかの業務にあてられるようになった

 

入院案内で排泄ケアへの取り組みを説明

同院では,入院が決まった患者に外来で「病院内使用オムツ統一化に関するお知らせ」を渡し,患者に合ったオムツ選択の実施と,TENA使用の目的を伝えている.また,入院案内のファイルのなかにも「おむつについて」の用紙(右)を入れ,TENA使用の目的を患者・家族に周知している

 

 

 

 

 

褥瘡対策委員会による活動

オムツの統一に加え,皮膚障害や褥瘡予防の目的で頻便の方や肌の弱い患者に対しては,委員会メンバーが中心となって撥水薬の使用を勧めている.「スキンケアについては褥瘡対策委員会が,褥瘡の処置や治療については皮膚・排泄ケア認定看護師が年2 回研修会を行っています.そのうちの1 回は地域の訪問看護師や開業医にも出席していただいています」(胡桃看護師長)

 

 

  

安曇野赤十字病院

〒399-8292 長野県安曇野市豊科5685
TEL:0263-72-3170
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